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新研究室:計算社会科学研究室(教員:楊鯤昊)

2026年3月16日(月)

2025年度より情報工学コースに「計算社会科学研究室(楊鯤昊先生)」が設置されたので紹介いたします。

研究室Webページ:https://css-laboratory.github.io/


AIで社会を理解し,社会を変える

 皆さんは,ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)を使ったことがあるでしょうか。レポート作成や情報検索などに活用した経験がある方も多いかもしれません。私たちの研究室では,このLLMを含む最先端のAI技術を使って,社会の仕組みを科学的に解明し,AI時代に適切する社会設計を提案していく研究に取り組んでいます。

計算社会科学とは?

 「計算社会科学(Computational Social Science)」とは,大規模なデータと計算手法を組み合わせて,人間の社会的行動を分析する学問分野です。たとえば,SNS上で何百万件もの投稿データを分析して人々の意見がどのように変化するかを調べたり,オンラインコミュニティでの協力パターンから「良いチームワーク」の条件を明らかにしたりします。従来の社会科学では,アンケートやインタビューなど小規模な調査が中心でしたが,インターネットの発展により膨大なデータが利用可能になった今,コンピュータの力を借りて社会をより精密に理解できるようになってきました。

AI for Social Science:AIが社会科学研究を加速させる

 私たちが特に力を入れているのが,「AI for Social Science」という研究テーマです。

 社会科学の研究では,テキストデータに対して「この文章はどのような意見を表しているか」「このニュースはどのような視点で報道されているか」といった判断(アノテーション)を人の手で行う必要があり時間と労力がかかっていました。私たちは,LLMを「代理ラベラー」として活用し,この作業を効率化する手法を開発しています。これにより,従来は数か月かかっていた分析が数日で完了できる可能性が生まれています。

 さらに,LLMをエージェント(自律的に行動するAI)として使い,仮想的な社会をシミュレーションする「社会シミュレーション」の研究も進めています。実際の社会実験が難しい問題——たとえば「ある政策を導入したら人々の行動はどう変わるか?」——を,AIエージェント同士のやりとりを通じて検証する試みです。


AI for Education:AIと一緒に「考える力」を育てる

 もう一つの重要なテーマが,「AI for Education」です。LLMが当たり前のように使われる時代において,教育のあり方も変わる必要があります。LLMに答えを聞くだけでは本当の学びにはなりません。大切なのは,「何を知りたいのか」「どのような前提で考えるのか」「何をもって理解できたと言えるのか」を自分で考える力です。

 私たちは,「LLM駆動型アクティブラーニング(LLM-driven Active Learning)」という新しい教育手法を開発・実践しています。この手法では,LLMを「教師エージェント」として活用します。教師エージェントは,学生との対話を通じて理解度をリアルタイムで把握し,まだ十分に理解されていない部分を発見して適切な質問やフィードバックを提供します。つまり,LLMを「答えを教えてくれる便利な道具」ではなく,「一緒に考え,学びを深めるパートナー」として位置づけているのです。

 この手法はすでに本学の授業でも試験的に導入しており,学生さんからは「LLMとの対話を通じて,ただ教材を読むよりも面白く勉強できるようになった」という声が寄せられています。


研究室で取り組めること

 計算社会科学研究室では,プログラミング(Python)や機械学習の技術を活かしながら,社会の課題に向き合う研究ができます。SNSデータの分析からAIエージェントの開発まで,データサイエンスと社会科学を融合した多彩なテーマに挑戦できる環境です。国際共同研究も活発に行っており,グローバルな視点で研究を進める機会も豊富にあります。

 「AIの技術で社会をもっと良くしたい」「データから人間の行動の謎を解き明かしたい」——そんな好奇心を持つ皆さんをお待ちしています。